2月 2019Archive

正範囲図

主題図において、正位置図さえ作成できない縮尺になると、もう範囲を示すことくらいしか地図にはできません。この種の地図を、正範囲図と呼んでいます。正範囲図では位置の忠実性は期待できないことから、およその範囲同士を漠と比較することに徹する他ありません。例えば、国と国、都市と都市とを、人口密度を基準に比較するとしましょう。ある区画をある模様で表現したならば、その区画の全域が、その模様が意味する人口密度であるとしか読み取れません。もちろん実際にそうなっているわけではないのですが、便宜上、区画内の均等な分布を前提に読み取るのです。
 ところで主題図で用いる記号は自由に定めることができると理解している方がいらっしゃるかもしれませんが、記号について何も学ばなくて良いわけではありません。地図記号は国際地理学会によれば「シンボル」と呼ばれていますが、表現媒体としての地図という考え方に立脚すると、地図記号も記号の一種と見做して問題ありません。ですから、記号論に基づいた勉強が必要なのです。

正位置図

主題図の分類として、同縮尺の地図を作成難易度順に並べると、難しい順に正形状図、正位置図、正範囲図となります。ですから縮尺が小さくなればなるほど正形状図を作成できる可能性は小さくなり、仮に作成できても精度が低くなることは避けられません。例えばヨーロッパの農村を地図にした場合、1万分の1程度の縮尺であれば、農地や建物を描き入れることができますが、5万分の1ともなると、正形状図の体を成さない可能性が高まります。畑や森林のような広大な土地は何とか正形状で示すことはできても、農家の実際の形状までは反映できないのが普通です。そこで、形状まで表現できない農家をどう表現すればよいのかが課題になりますが、結論から言えば、正確な位置を示すことが精一杯です。この「正確な位置を示す」ことを目途とした地図を、正位置図と呼びます。正位置図から農家の形状までは読み取れませんが、大農家なのか小農家なのか、農家の近くに何が広がっているのか等は読み取れます。こうした情報から、ヨーロッパの農家の屋敷の近くには草地が多いことが分かったり、大農家には水濠が設置されていることが理解出来たりするのです。

縮尺

地図上の都市や河川を考える上で、縮尺の問題は非常に重要です。というのも、都市は点であるとは限らず、河川も線であるとは限らないからです。つまり、縮尺が異なれば、都市や河川の表現の仕方も大きく異なるのです。具体的には、縮尺が大きければ、都市は点ではなく、広がりを持った面データとして表現されることになります。逆に縮尺が小さくなれば、点に近づくことになります。都市に比べれば、縮尺が相当大きくても河川や道路はそのほとんどが線で示されますが、過度に大きな縮尺の地図上では、面データに変わることもあります。このことからも分かるように、縮尺の大きな地図は、比較的定性的データと相性が良いと言えます。逆に、縮尺の小さな地図は、定量的地図として作成するのが適当だと言えるでしょう。
 地図をよく理解するようになると、縮尺が、地図表現の忠実性にも関わるものであると分かるようになります。例えば、地図の図法に正角図法、正積図法なるものがあります。この「正」こそ、忠実性を意味するのですが、地図の忠実性とは、形状、位置、範囲のそれを指します。そして主題図はこの忠実性の分類により、正形状図、正位置図、正範囲図、どれでもない図の4つに分類することが出来るのです。忠実性の高低は当然ながら縮尺の大小に起因します。一般に、大きな縮尺の地図では忠実性が高く、正形状図となり得る資格を持っています。形状が忠実であるということは、位置や範囲も忠実であることになるため、
正範囲図が、正位置図と正形状図を、正位置図が正形状図を包摂していることが理解できます。秀逸な地図では、建造物の形状までもが正確に描かれており、例えば農地の地図であれば、その農地の経営規模をも推察することができる程です。