現在のメッシュマップ

 現代のメッシュマップは手書き時代のそれとは異なるため、最近はモノクロのメッシュマップを見かける機会が減りました。デジタル化に応じて政府も標準コードを整備しており、国土数値情報、工業統計、商業統計等を、誰でも手軽に利用できるようになっています。
 ところで主題図の目的はそもそも、主題に関する情報を提供することにありました。ですからその表現部分が目立つような地図でなければなりません。しかし基図を排除してしまうわけにもいかないので、主題の表現と基図とが絶妙、絶妙なバランスの内に併存しているのです。ベースマップの存在感を薄めるためには、印刷スキルを会得しなければなりません。多色刷りが可能な場合は、ベースマップをグレー等の地味な色で統一し、主題表現を浮かび上がらせます。しかし単色刷りしか行えない場合、ベースマップを陰に追いやるための工夫が必要になるのです。
 主題図において、ベースマップが主役でないことは間違いありません。しかし不要とするわけにもいきません。何故なら、主題の内容の存在位置、広がりを、ベースマップが示すからです。ベースマップのその役割は、色々な方法で達成されます。例えば経緯線、山や河川等の地形、鉄道や道路等の交通路、役所や学校といった施設、集落、行政界、地名等が背後に見えれば、主題内容の位置や広がりは十分認識できます。

等値線の注意点

 等値線で表現するのは、地図作成者にとって魅力的ですが、幾つか注意すべきポイントがあります。等値線は基図に書き入れるという形で表現しますが、その等値線は基図の表現より目立たなければなりません。主題図である以上、等値線がその主題を表現しているからです。実際、優れた地図に見られる等温線、等雨量線等は、どれも太い実線が用いられています。
 さて、メッシュ記号もデータ転換機能を持っています。メッシュ記号は等面積のグリッドで構成された格子で、それを基図に重ね合わせた地図がメッシュマップです。一つ一つグリッドのデータを表現する記号ですが、グリッドは便宜上の区画であり、それ以上の意味はありません。つまりグリッドを一種のドットと捉えることができ、面データが点データに変換されるのです。メッシュマップというくらいですから、グリッドを視認できるものもあるのですが、中には線を消している地図も存在します。このような地図は見た目にも点データと捉えやすく、面積という概念が消失します。因みにメッシュ記号は名目尺度にも順序尺度にも対応していますが、比率尺度には対応していないと考えた方が無難です。名目尺度の例としては、土地利用図を挙げることができるでしょう。順序尺度の例としては、市街地拡大図や商店分布図、耕地率図等が挙げられます。
 メッシュ記号は模様や方向で名目尺度を表現し、大きさや濃淡で順序尺度を表現します。以前は手書きのものも多かったので、モノクロのメッシュマップを想起する人も多いのですが、現在はデジタル化が進んでおり、標準メッシュコード体系も整備されています。

等値線の特徴

 等値線といえば、等高線や等深線のような地形を表現するものや、等温線や等雨量線といった気候に関するものがよく知られています。最近は環境問題への関心が高まっていることから、新たに地盤沈下量や大気汚染の程度を測定して、等値線が作成されることもあります。等値線は当然ながら線記号なのですが、地点を結ぶという性質上、「地点」の統計量と、「地域」の統計量とが読み取れます。前者であれば定量的点データと解釈できますし、後者であれば定量的面データと理解できます。ただ後者の場合、面倒な配慮が必要になります。というのも、各データが、当該面の面積に相応するものでなければならないからです。等値線が作る面は、全て面積が異なっています。ですから面積比を無視してデータを取り扱っても意味がありません。
 等値線図を作成する際、点データを線データに転換することになります。いわゆる内挿法がそれに当たり、地点間のデータの傾斜を推定するのです。推定は多くのデータ分布から導き出される、直線的な変化率を前提とします。ですから多くは単純な比例配分によって決定することになります。但し、内挿法に狂いが生じることもあります。ドットの並びが直線から遠ざかり、格子状に位置してしまう状況がそれです。どの点同士を結ぶのかは、補足的データに頼って行う他ありません。しかし場合によっては、そのようなデータの入手が困難なこともあるでしょう。その場合、対角線の交点の値が基準になり得ます。
 定量的面データとして等値線を読み取る時、面の代表点は分布状況次第だということになります。分布が均一と想定できるならば問題ありませんが、不均等なのであれば、やはり補足データを利用するしかありません。分布の重心は色々な方法で算出できるので、興味のある人は統計学を学べばよいでしょう。

正範囲図

主題図において、正位置図さえ作成できない縮尺になると、もう範囲を示すことくらいしか地図にはできません。この種の地図を、正範囲図と呼んでいます。正範囲図では位置の忠実性は期待できないことから、およその範囲同士を漠と比較することに徹する他ありません。例えば、国と国、都市と都市とを、人口密度を基準に比較するとしましょう。ある区画をある模様で表現したならば、その区画の全域が、その模様が意味する人口密度であるとしか読み取れません。もちろん実際にそうなっているわけではないのですが、便宜上、区画内の均等な分布を前提に読み取るのです。
 ところで主題図で用いる記号は自由に定めることができると理解している方がいらっしゃるかもしれませんが、記号について何も学ばなくて良いわけではありません。地図記号は国際地理学会によれば「シンボル」と呼ばれていますが、表現媒体としての地図という考え方に立脚すると、地図記号も記号の一種と見做して問題ありません。ですから、記号論に基づいた勉強が必要なのです。

正位置図

主題図の分類として、同縮尺の地図を作成難易度順に並べると、難しい順に正形状図、正位置図、正範囲図となります。ですから縮尺が小さくなればなるほど正形状図を作成できる可能性は小さくなり、仮に作成できても精度が低くなることは避けられません。例えばヨーロッパの農村を地図にした場合、1万分の1程度の縮尺であれば、農地や建物を描き入れることができますが、5万分の1ともなると、正形状図の体を成さない可能性が高まります。畑や森林のような広大な土地は何とか正形状で示すことはできても、農家の実際の形状までは反映できないのが普通です。そこで、形状まで表現できない農家をどう表現すればよいのかが課題になりますが、結論から言えば、正確な位置を示すことが精一杯です。この「正確な位置を示す」ことを目途とした地図を、正位置図と呼びます。正位置図から農家の形状までは読み取れませんが、大農家なのか小農家なのか、農家の近くに何が広がっているのか等は読み取れます。こうした情報から、ヨーロッパの農家の屋敷の近くには草地が多いことが分かったり、大農家には水濠が設置されていることが理解出来たりするのです。

縮尺

地図上の都市や河川を考える上で、縮尺の問題は非常に重要です。というのも、都市は点であるとは限らず、河川も線であるとは限らないからです。つまり、縮尺が異なれば、都市や河川の表現の仕方も大きく異なるのです。具体的には、縮尺が大きければ、都市は点ではなく、広がりを持った面データとして表現されることになります。逆に縮尺が小さくなれば、点に近づくことになります。都市に比べれば、縮尺が相当大きくても河川や道路はそのほとんどが線で示されますが、過度に大きな縮尺の地図上では、面データに変わることもあります。このことからも分かるように、縮尺の大きな地図は、比較的定性的データと相性が良いと言えます。逆に、縮尺の小さな地図は、定量的地図として作成するのが適当だと言えるでしょう。
 地図をよく理解するようになると、縮尺が、地図表現の忠実性にも関わるものであると分かるようになります。例えば、地図の図法に正角図法、正積図法なるものがあります。この「正」こそ、忠実性を意味するのですが、地図の忠実性とは、形状、位置、範囲のそれを指します。そして主題図はこの忠実性の分類により、正形状図、正位置図、正範囲図、どれでもない図の4つに分類することが出来るのです。忠実性の高低は当然ながら縮尺の大小に起因します。一般に、大きな縮尺の地図では忠実性が高く、正形状図となり得る資格を持っています。形状が忠実であるということは、位置や範囲も忠実であることになるため、
正範囲図が、正位置図と正形状図を、正位置図が正形状図を包摂していることが理解できます。秀逸な地図では、建造物の形状までもが正確に描かれており、例えば農地の地図であれば、その農地の経営規模をも推察することができる程です。

ビッグデータ

地図作成においてもビッグデータの活用が進んでいます。国土地理院は2017年、民間業者と協定を結びました。地図の精度を上げ、登山客に役立つ情報を提供するためとしています。

実際、2018年には日本アルプスや屋久島の登山道が修正された地図がオンライン上で公開されました。これまでの地図製作は実見の測量に依拠していましたが、手間と費用が無駄ではないかとの指摘が寄せられていました。

また当該企業はGPSを通じて登山客の移動経路をデータ化しており、そのデータを解析することで、これまでの地図に不正確な部分があれば修正できると考えていた地理院としては、見通し通りの修正を叶えることができたのです。

登山道は天候や人為的な理由で、ルートや細部の情報が日々変わります。仮に雪崩や土砂崩れのような不測の事態が生じたとしても、ビッグデータを利用することで瞬時に地図を更新することができるようなりました。但し「スモールデータ」しか集まらないような箇所、すなわち登山客の少ないところは分析すること自体が難しく、今後の課題となりそうです。

確かにビッグデータの活用には上述したようなメリットがあります。しかし、しばしば問題視される「監視社会」を形成することにもなりかねず、メリットとデメリットを天秤にかけ、きちんと吟味する必要はあるでしょう。

政府と民間とが個人情報を介して協力し合うのは気味の悪いことでもあり、GPSで登山客の一挙手一投足が探索できるという事実を軽んじることはできません。今やビッグデータの活用は急増しており、地図製作以外にも消費活動を中心に、我々の行動は監視されています。

一般市民としてどう受け止めるべきか難しく、需要に応じた商品やサービスを効率よく提供してくれる一方、内心まで覗き見られているような心地の悪さを感じた人も少なくないはずです。プライバシーに関しては今後の課題と言えるでしょう。

衛生のモニタリング

今では人工衛星のモニタリングは間断なく行われています。衛星が発信する電波を捕らえると、その情報から、好きに選んだ地点の位置やそれらの地点間の距離を知ることができます。

仕組みは単純で、衛星を頂点にした三角形が、正に三角測量のそれに該当します。一つの頂点が宇宙にあるということは、地点間の距離がどれほど長くても測れることを意味します。この仕組みを利用すれば、色々な測り方が可能です。

応用例としては、複数の衛星を活用して、より正確に算出することができます。地上を頂点とした三角測量に当たるので、条件が整えば標高を測ることもできますし、移動物の移動の模様をリアルタイムで知ることもできます。衛星の電波を受信する機械も深化しており、スマートホンやカーナビとして、利便性の高い日常生活の中に溶け込んでいます。

こうした測量の進化のスピードは、将来のダイナミックな測量を期待させます。地球の測量はもちろん、地球以外の天体の観測です。既に20世紀の時点で、我々は太陽系の天体を測量することに成功しました。昔から地球以外の天体に対してロマンを抱いてきた我々は、命の危険を顧みず、米ソを中心として宇宙の探索が進められてきました。

ソ連が最初に月の裏側を撮影してリードすると、アメリカは月の軌道をめぐらせながら、天体研究に有用な写真を撮影してきました。月面に関してはそれだけで十分な情報が得られましたが、残る天体は米ソにとっても未知のものです。次は火星かと噂されていますが、火星は決して身近な天体ではありません。優れた望遠鏡で覗いても、粒ほどにしか見えません。加えて地球に接近近付くのが2年に1度のペースであり、科学者以外は写真でしか拝めないものです。

宇宙を測量するには

人工衛星が打ち上げられたことで、地球そのものを宇宙から測量することができるようになりました。先ず測定されたのは衛星の軌道でした。軌道は地球の重力や形状の影響受けるため、この軌道を電波で捉えることによって地球の形が分かるのです。

そこで分かった事実は、地球は球体ではあるものの、楕円で、しかも細かな歪みがあるということでした。北極は突き出ていますし、南極は逆に凹んでいます。赤道も円を描いているわけではありません。人工衛星は宗教的な妄信を完全に破壊することになったのです。

地球に関する十分なデータが得られたのは、衛星を利用したジオイド測量が発達してからのことです。ジオイドは標高計測の基準であり、いわゆる海面を指します。海上であれば平均海面を使用すればよいのですが、陸地については仮想の水面を作り上げます。

海の高さは重力によって変わるため、その陸地の場所で海が存在したとすればどれほどの高さになるのかを算出しなければなりません。地球の質量は均一ではないため、衛星によって重力と遠心力とのバランスした位置を算定することで導き出されます。

こうしたジオイド測量に加え、人工衛星は様々なセンサーを搭載してきました。リアルタイムで地球を撮影することができるようにもなりましたし、磁器、赤外線、可視光線で測定することも可能になりました。データはコンピュータで解析され、肉眼で確認できるものをはるかに超えた情報がもたらされています。

例えば肉眼では人工衛星写真を見ただけでは、森林と田んぼとを区別することがきません。しかし異なる波長データを組み合わせた解析方法によって針葉樹林と広葉樹林とを判別し、再構成した上で見分けられるのです。

地図とデザイン

美しい地図を作成するためには、デザインのスキルを身に付ける必要があります。ここでは地図をデザインする時に気を付けたいポイントを紹介します。

第一に挙げられるのは「ネガティブスペース」の活用です。地図は目的地や現在地周辺を集中してみるものですから、誰であろうと見続ければ疲れます。ネガティブスペースは構図における不必要な情報や空白部分を指し、視線を休ませることのできる箇所です。

次に挙げられるのは「色による結びつき」です。作成者の色の使い分けが上手ければ、地図を利用する人は関連するものを瞬時に読み取ることができ、満足してもらえることでしょう。

三つめは「タイポグラフィー」です。文字のデザインと換言することもできます。構図を崩さない程度に目立つフォントにすることで、地図は格段に格好良く生まれ変わります。

四つ目は「ミニマルスタイル」です。地図を作る上で留意すべきことは、その地図の利用者にとって実用的(正確)かどうか、及び、素早く把握できるかどうか、でしょう。つまり機能性とデザイン性を兼ね備えた地図が優良だと言えるのです。方角や位置関係を違えず、スタイリッシュにまとめた地図は好評を博するものです。

五つ目は「縮尺」です。地図作成者の中には、注目してほしいスポットをどのように描けばよいのか、苦慮している方もいらっしゃるでしょう。縮尺を使えばそのスポットを無理なく強調することができます。縮尺を利用すれば地図の正確さが一定程度損なわれますが、迷わせない程度の強調は不快感を抱かせないはずです。

最後に挙げるのは「オーディエンスの知識」です。地図作成者は、その地図を手に取る者の目的を想像しながら作ることでしょう。例えば旅行者向けの地図であれば、有名スポットのイラスト等を書き入れることで上手く惹きつけることができます。